物性基礎工学研究グループ (田仲研)
 

トポロジカル物質の超伝導状態における理論



超伝導トポロジカル絶縁体の理論

 2010年,トポロジカル絶縁体Bi2Se3に銅をドープしたCuxBi2Se3が転移温度約3Kの超伝導体になることが報告された[Y.S.Hor et.al. PRL (2010)]. 母物質がトポロジカルな電子状態をもつことから,その超伝導体もトポロジカルに非自明であることが期待され,実際, 大阪大学の安藤グループによって測定されたポイントコンタクトによるトンネルコンダクタンスは零電圧でピークを示しており,CuxBi2Se3がトポロジカル超伝導体であることを強く示唆する[1]. しかしながら,三次元のフルギャップのトポロジカル超伝導体におけるトンネルコンダクタンスは零電圧ではピークではなくむしろディップになることが理論的に分かっており[2], 得られている実験結果からCuxBi2Se3がトポロジカル超伝導体であるとそのまま解釈するのは困難であった.実は,トポロジカル超伝導体の表面に現れるギャップレスの表面状態は母物質のトポロジカル絶縁体がもつ表面ディラック電子の影響を強く受けている[L.Hao and T.K.Lee, PRB (2011)][T.H.Hsieh and L.Fu, PRL (2011)]. 我々は,これを反映して,トンネルコンダクタンスが零電圧でピークを示しうることを明らかにした[3].また,CuxBi2Se3は強いスピン軌道相互作用をもつものの,準古典理論を構成できることが分かっており,更なる実験の解析も可能になっている[4]. 更に,ジョセフソン効果[5]や回転磁場下でのトンネル分光[4],比熱[6,7],ナイトシフト[6],核磁気緩和率[7]により超伝導の対称性を詳細に決定できることを提案した.


  CuxBi2Se3において可能な超伝導対関数.楕円球はフェルミ面を表し,その色は超伝導ギャップの大きさ,矢印はdベクトルを示している.


一方,STMによって測定されたトンネルコンダクタンスは従来型のs波超伝導体と同様の電圧依存性を示しており,CuxBi2Se3は自明な従来型超伝導体ではないかという意見が提出された[N.Levy et al., PRL(2013)]. しかし,我々は,この結果はむしろCuxBi2Se3がトポロジカル超伝導体であることを支持するものであることを示した[8]. CuxBi2Se3は常伝導状態において表面状態が存在しているので,もし仮にs波超伝導が実現したなら,その表面状態密度はダブルピーク構造を示さなければならない. これは実験で観測されているU字型の単一ピーク構造とは明確に異なる.この実験結果はむしろ,トポロジカル超伝導状態が実現しているがフェルミ面が三次元的ではなくシリンダー型の二次元的なものになっていると解釈できる[8]. 以上の研究により,CuxBi2Se3がトポロジカル超伝導体であることが強く示唆されるが,更なる理論・実験研究により詳細な対称性を確定していく必要がある.



[1]Topological Superconductivity in CuxBi2Se3
Satoshi Sasaki, M. Kriener, Kouji Segawa, Keiji Yada, Yukio Tanaka, Masatoshi Sato, and Yoichi Ando
Phys. Rev. Lett. 107, 217001(2011)

[2]A theoretical study of tunneling conductance in PrOs4Sb12 superconducting junctions
Yasuhiro Asano, Yukio Tanaka, Yuji Matsuda, and Satoshi Kashiwaya
Phys. Rev. B 68, 184506 (2003)

[3]Theory of tunneling conductance and surface-state transition in superconducting topological insulators
Ai Yamakage, Keiji Yada, Masatoshi Sato, and Yukio Tanaka
Phys. Rev. B 85, 180509(R)(2012)

[4]Quasi-Classical Theory of Tunneling Spectroscopy in Superconducting Topological Insulator
Shota Takami, Keiji Yada, Ai Yamakage, Masatoshi Sato, Yukio Tanaka
J. Phys. Soc. Jpn. 83, 064705 (2014).

[5]Anomalous Josephson current in superconducting topological insulator
Ai Yamakage, Masatoshi Sato, Keiji Yada, Satoshi Kashiwaya, and Yukio Tanaka
Phys. Rev. B 87, 100510(R) (2013)

[6]Bulk Electronic State of Superconducting Topological Insulator
Tatsuki Hashimoto, Keiji Yada, Ai Yamakage, Masatoshi Sato, Yukio Tanaka
J. Phys. Soc. Jpn. 82, 044704 (2013).

[7]Effect of Fermi surface evolution on superconducting gap in superconducting topological insulator
Tatsuki Hashimoto, Keiji Yada, Ai Yamakage, Masatoshi Sato and Yukio Tanaka
Supercond. Sci. Technol. 27, 104002 (2014).

[8]Dirac-fermion-induced parity mixing in superconducting topological insulators
Takeshi Mizushima, Ai Yamakage, Masatoshi Sato, and Yukio Tanaka
Phys. Rev. B 90, 184516 (2014)



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2013 Tanaka Lab.