物性基礎工学研究グループ (田仲・川口研)
 

トポロジカル絶縁体の理論



トポロジカル結晶絶縁体の薄膜の理論

トポロジカル結晶絶縁体PbxSn1-xTeは三次元物質であり,その(001)表面に現れるディラック電子は(110)に関する鏡映対称性によって保護されている. この系を薄膜にすると二次元のトポロジカル結晶絶縁体になり,その端にギャップレスの状態が現れる[J.Liu et. al. Nat.Mater. (2014)]. さらに,我々は,薄膜の層数が奇数と偶数で異なったトポロジカル相が実現することを明らかにした[1]. 前者は(001)の鏡映対称性で保護されており,量子スピンホール相に対応する. 後者は鏡映ではなく映進対称性によって保護されており,薄膜系において初めて実現するトポロジカル相である. また,膜厚を変えるとバンドギャップの大きさや,これらのトポロジカル相を特徴付けるトポロジカル不変量の値を制御することも可能である. この結果は,薄膜化などによって人為的に結晶の構造とその対称性を変えることで,新しいトポロジカル相を創出,制御できる,というトポロジカル物質開拓の一つの基本的な方法論を提示しており,更なる展開が期待される.


  上段は奇数層(a)および偶数層(b)におけるエネルギーギャップEの層数Nzに対する依存性,NMはミラーチャーン数,ζMは映進対称性によって保護されたトポロジカル不変量を表す.下段は7層(c)と20層(d)におけるリボン状の有限系のエネルギースペクトル.


[1]Topological phase transition in a topological crystalline insulator induced by finite-size effects
Hideyuki Ozawa, Ai Yamakage, Masatoshi Sato, and Yukio Tanaka
Phys. Rev. B 90, 045309 (2014)


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