物性基礎工学研究グループ (田仲研)
 

スピントロニクスの理論


トポロジカル絶縁体でのスピントロニクス

 トポロジカル絶縁体表面(TI)では電子の運動の方向と電子のスピンの方向が相互に直交するように向くような性質(spin-momentum locking)があるため、 その表面ではスピントロニクスでの主要な研究テーマであるスピンの方向とその輸送の制御が容易にできることが期待されています。

磁気抵抗効果の理論

 
 図:TI表面での磁気抵抗効果
 私たちはTIのspin-momentum lockingの性質を活用した磁気抵抗効果を研究しました(図1)。 磁性体の磁化の相対的な配置だけでなく面内磁化の向きに依存した磁気抵抗効果(異方的磁気抵抗効果)があることを示しました。

Giant magnetoresistance in the junction of two ferromagnets on the surface of diffusive topological insulators
Katsuhisa Taguchi, Takehito Yokoyama, and Yukio Tanaka
Phys. Rev. B 90, 094512 (2014)


スピンポンピングの理論

 
 図:TI表面でのスピンポンピング
 磁性体の磁化と電子スピンが結合している系では、磁化の運動によって電子スピンが偏極する現象や起電力が誘起される現象が研究されています。 これらの現象はスピンポンピングと呼ばれています。私たちはTI表面に強磁性絶縁体が接合している系でのスピンポンピングの理論研究をしました(図2)。 その結果、TI表面での磁性体の磁化が時間変化することによって電子スピンが偏極し、電流が駆動されることを明らかにした。 さらにTI表面の不純物散乱の効果を考慮すると、磁性体の磁化の時間変化によって、拡散を伴った電荷密度ならびにスピン流が誘起されることを示した。

K. Taguchi, K. Shintani, and Y. Tanaka, in preparation.

光誘起スピン・スピン流の理論

 光の角運動量がTI表面の電子系に転送されることによってスピン偏極ならびにスピン流が誘起されることを理論的に示しました。

K. Shintani, K. Taguchi, and Y. Tanaka, in preparation.





Dirac半金属でのスピントロニクス ~アキシトロニクス~ の理論


 ディラック電子系では電荷・スピン・ヘリシティの自由度を持つディラック電子が存在します。 この系でも電子の運動の方向とスピンの方向が相互に関連し、右手系(左手系)のヘリシティを持つ電子はスピン偏極の方向に平行(反平行)に電子が運動する、という性質を持ちます。 このような性質は、スピントロニクスの主要研究テーマであるスピンの方向とその輸送の制御の助けとなることが期待できますので、 現在私たちは、電荷・スピン、さらにヘリシティの自由度を活用したエレクトロニクス--アキシトロニクスの研究を進めています。


スピンポンピングによる軸性流生成の理論

 電荷・スピン・ヘリシティの自由度を持つ電子が存在する電子系?ディラック電子系?と磁性体を接合した系において、スピンポンピングを使った軸性流生成の研究を行いました。 グリーン関数を使って解析的に計算した結果、接合した磁性体の磁化の時間変化によって、軸性流が誘起されることを示しました。 磁化が空間的に非一様な磁化構造を持つ場合には、誘起された軸性流が非局所的に伝搬することも明らかに、軸性流には局所項と非局所項がありことがわかりました。 軸性流の検出方法についても議論しました。 軸性流の局所項は磁性体の磁化を強磁性共鳴した際の磁化の緩和(ダンピング)の強さを磁性体そのもののダンピングの大きさとディラック半金属/磁性体でのダンピングの大きさとを比較することで軸性流の有無を判断することができます。 一方、非局所項はディラック半金属の上に磁性体とスピン軌道相互作用の大きい常磁性金属を接合した系を用意し、軸性流を電流に変換することで検出することができます(図3)。

 私たちが研究した軸性流は、電流を伴わずに流れることがわかりました。そのため、この軸性流はジュール熱損失無く電子情報を転送手段として応用に活用できることが期待できます。


MI/DS/NMでのスピンポンピングによる非局所軸性流

Axial current driven by magnetization dynamics in Dirac semimetals
Katsuhisa Taguchi and Yukio Tanaka
Phys. Rev. B 91, 054518 (2015)


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< p>2013 Tanaka Lab.