物性基礎工学研究グループ (田仲研)
 

超伝導接合

超伝導接合とは超伝導体と他の常伝導物質とを接合したもの、あるいは超伝導体を接合したものがあります。 前者や常伝導体・超伝導体接合 後者は超伝導体・超伝導体接合あるいはジョセフソン接合と呼ばれています。 超伝導体はフェルミ面上にエネルギーギャップを持ちます。 超伝導体をエレクトロニクスとして応用する場合には接合の特性を知る必要があり、超伝導接合の研究は応用面から重要です。 また超伝導体の対称性、エッジ状態さらにはトポロジカル量子現象の観点から超伝導接合の物理は超伝導の基礎研究としてとても重要です。


常伝導体・超伝導体接合とアンドレーエフ反射

常伝導体・超伝導体接合においては、常伝導金属から入射した電子のエネルギーが超伝導体のエネルギーギャップ内にある場合は、 準粒子としてトンネルすることができません。超伝導体との界面では通常の反射だけではなくて、 入射した電子が超伝導体との界面で正孔(ホール)として反射されるアンドレーエフ反射が存在します。 アンドレーエフ反射により、超伝導体中にクーパー対が形成されます。 この過程は1964年Andreevにより予言され[1]、常伝導体・超伝導体接合の輸送特性を理解するうえで不可欠なものとなっています。 アンドレーエフ反射の理論を超伝導体接合の輸送特性に拡張したのが1982年のBlonder, Tinkham, Klapwijk[2]の理論でした。 接合の透過率が1の場合には完全アンドレーエフ反射が起こり、透過率が低くなるとアンドレーエフ反射の確率は抑制されます。


ジョセフソン接合

超伝導体と超伝導体を接合した系においては、2つの超伝導体の持つ巨視的な位相差に依存した超伝導電流が流れます。 この電流は電圧をかけなくても流れる無散逸な流れです。 この画期的な効果は、1962年にJosephson[3]によって予言され、その後多くの実験が行われています。 2つの超伝導体の透過率が低い場合はdcジョセフソン電流は、sinφ に比例しますが、 透過率が高くなると高調波 sin() の効果が重要になり、電流位相差依存性を描いた際の波形は典型的なsinの形から大きくずれます。 ジョセフソン効果の理論研究はいろいろと行われて今したが、 90年代初頭に古崎・塚田によってアンドレーエフ反射係数を使って系統的にジョセフソン電流を表現する理論が登場して以降、大きく発展しました[4]。


近接効果

金属と超伝導体を接合した系では、金属の中にクーパー対が侵入します。 この効果を近接効果と呼びます。アンドレーエフ反射を作り出す電子・ホールの干渉効果と近接効果は表裏一体をなすものであります。 金属が拡散伝導領域にあるときは、金属・超伝導体の接合系の抵抗はバルクの金属の値と界面抵抗の単純な和とはなりません。 侵入したクーパー対のために金属の抵抗は一般に小さくなります。 このような近接効果による抵抗の計算を行う際にはUsadel方程式を用いた方法が大変に有効です[5]。 もともとLarkinらによって開発されていましたが、90年代メゾスコピック超伝導の進歩によって進展して、 Volkov[6]、Nazarov[7]らによって発展しました。


アンドレーエフ束縛状態

超伝導の接合系や磁束芯などの不均一な超伝導系では電子とホールの干渉によりアンドレーエフ束縛状態(ABS) とよばれるギャップ内状態が存在することが60年代から知られていました[8]。 超伝導体・超伝導体のジョセフソン接合においてはアンドレーエフ束縛状態を用いて、 ジョセフソン電流を記述できることがあることは、90年代のBeenakkerらの研究で知られています[9]。 スピン1重項の超伝導体においては、超伝導体表面においては一般にはアンドレーエフ束縛状態は存在しません。 しかし、銅酸化物超伝導体等の異方的超伝導体においては(銅酸化物超伝導体のクーパー対の対称性はd波ということが明らかになっています)、 表面に零エネルギー(ミッドギャップ)状態が形成されます[10]。 零エネルギー状態は、常伝導金属・超伝導体接合におけるトンネル分光における零バイアス電圧のコンダクタンスピークとして現れて[11]、 その存在は異方的超伝導体を特徴づけるものとして今日広く知られています[12]。 異方的超伝導体のトンネル分光の研究はその後発展して、今日のマヨラナフェルミオンの研究へとつながっています[13-14]。


参考文献

[1]A.F. Andreev Sov. Phys.JETP 19 1228 (1964).
[2]G.E. Blonder, M. Tinkham M and T.M. Klapwijk, Phys. Rev. B 25 4515 (1982).
[3]B.D.Josephson, Phys. Lett. 1 251 (1962).
[4]A. Furusaki and M. Tsukada, Solid State Commun. 78 299 (1991).
[5]A. I. Larkin and Yu.V. Ovchinnikov, Sov. Phys. JETP 41, 960 (1975).
[6]A. F. Volkov, A.V. Zaitsev, and T.M. Klapwijk, Physica (Amsterdam) 210C, 21 (1993).
[7] Yu. V. Nazarov, Phys. Rev. Lett. 73, 1420 (1994).
[8]W.L. McMillan, Phys. Rev. B 175 559 (1967).
[9]C.W.J. Beenakker and H. van Houten Phys. Rev. Lett. 66 3056 (1991).
[10]C. R. Hu, Phys. Rev. Lett. 72, 1526 (1994).
[11]Y. Tanaka and S. Kashwiaya, Phys. Rev. Lett. 74 3451 (1995).
[12]S. Kashiwaya and Y. Tanaka. Rep. Prog. Phys. 63 1641 (2000).
[13]Y. Tanaka, T. Yokoyama and N. Nagaosa, Phys. Rev. Lett. 103, 107002 (2009).


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2013 Tanaka Lab.