物性基礎工学研究グループ (田仲研)
 

超伝導スピントロニクス


強磁性体・超伝導体接合

従来型のスピン1重項超伝導体を考える限り強磁性と超伝導はお互いに相容れない概念として考えられてきました。 例えば交換磁場が超伝導体に入ることでスピン1重項のクーパーペアは不安定になると考えられます。 強磁性体のつくる交換磁場とスピン1重項のクーパー対が共存すると、重心運動量が有限のクーパーペアが形成されクーパーペアのペア関数は空間的に振動することになります。 これが1964年にFulde Ferrell Larkin Ovchinnikovらによって導入されたFFLOペアというものです。 強磁性体と超伝導体の接合を考えると、強磁性体の接合の中にはペアポテンシャルは存在しませんがペア振幅が侵入します。 交換エネルギーが強い場合はペア振幅の大きさは急激に減少します。 しかし、交換エネルギーが小さい、弱く分極した強磁性体においては、ペア振幅が振動的なふるまいを持ち、FFLO的なペア振幅が浸入することになります。 強磁性・超伝導体接合は、Bulaevskii Buzdinらによって1980年ごろから理論研究が始まりました。 強磁性体の交換磁場、長さを調節するとジョセフソン接合は0接合からπ接合に変化します。 トンネル接合を考えた場合、特にハーフメタルのように強磁性体のフェルミエネルギーがギャップ内に存在するとき、 その透過率はクーパーペアの対称性に強く依存します(下図)。 また、実験的にも2001年にRyazanovによってπ接合が実現されています。

図:強磁性体/超伝導体トンネル接合の概略

一方、強磁性体超伝導体接合を舞台として奇周波数ペアという概念がリバイバルされることになりました。 もともとこの概念は1974年にBerezinskiiによって超流動ヘリウム3のクーパーペアの候補として議論されましたがバルクの状態で実現は難しいと考えられていました。 強磁性体接合ではスピン空間の対称性の破れによって奇周波数スピン3重項s波が存在できるというものです。 この画期的なアイディアはBergeret Volkov Efetovらによって2001年に提案されました。 特に界面でスピンをフリップさせる散乱過程が存在するとスピンのそろったクーパーペアが実現されて、 そのクーパーペアは強磁性体の中を長距離にわたって(交換磁場がない従来の近接効果と同程度の長さという意味)浸入が可能となります。 強磁性体を介した近接効果の研究は今日理論・実験から詳しく研究が行われています。 今日ではスピン軌道相互作用の含まれた系の研究がさかんで、例えばトポロジカル絶縁体上の強磁性体・超伝導体接合などは新しい問題として注目されています。




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