物性基礎工学研究グループ (田仲研)
 

トポロジカル絶縁体とトポロジカル結晶絶縁体



トポロジカル絶縁体

固体中の電子の波動関数から定義されるトポロジカル不変量が非自明な値をとっている絶縁体をトポロジカル絶縁体と呼んでいる. その表面には安定な金属状態が現れるが,これはトポロジカル不変量によってその存在が保証されている. さらに,トポロジカル不変量は系の電磁応答・輸送現象における物理量にもなっている. トポロジカル絶縁体の代表的な例は磁場中の二次元電子系において生じる量子ホール効果[1]である. この場合には量子ホール伝導度がトポロジカル不変量であり[2][3],その値に応じて系の端には金属状態が存在し[4][5],永久電流が流れている. 量子ホール効果は古くから知られている例であったが,近年になってそのスピン版である量子スピンホール効果, さらには三次元系におけるトポロジカル絶縁体が発見され, 以降,この分野の研究が爆発的に加速することになった[6][7][8]. 興味深いことに,三次元のトポロジカル絶縁体においては電場(磁場)によって磁化(電気分極)が誘起される電気磁気効果が生じ, さらに,その分極率がトポロジカル不変量で表される(=量子化されている)ことが予言されている.



トポロジカル結晶絶縁体

量子スピンホール絶縁体や三次元のトポロジカル絶縁体は時間反転対称性に保護されたZ2トポロジカル不変量をもち, また,これに対応して表面金属状態が存在している. 一方,時間反転対称性の代わりに,回転や鏡映といった結晶の対称性によってもトポロジカル不変量を定義できることも分かっている[9]. このトポロジカル不変量が非自明な値をとっている系をトポロジカル結晶絶縁体(topological crystalline insulator)と呼んでいる. 実際,2012年にはW-Y族半導体において,鏡映対称性によるトポロジカル結晶絶縁体状態が実現していることが実験的に明らかになった[10]. これに留まらず,様々な物質の予言やその分類理論[11]も提案され,更に研究が加速している[12].

   
図:トポロジカル結晶絶縁体SnTe.平板で示され
   た面に関する鏡映対称性にを用いてトポロジカル
   不変量(ミラーチャーン数)が定義される.


参考文献

[1] K. V. Klitzing, G. Dorda, and M. Pepper, Phys. Rev. Lett. 45, 494 (1980).
[2] D. J. Thouless, M. Kohmoto, P. Nightingale, and M. den Nijs, Phys. Rev. Lett. 49, 405 (1982).
[3] M. Kohmoto, Ann. Phys. (N. Y.) 160, 355 (1985).
[4] Y. Hatsugai, Phys. Rev. B 48, 11851 (1993).
[5] Y. Hatsugai, Phys. Rev. Lett. 71, 3697 (1993).
[6] M. Z. Hasan and C. L. Kane, Rev. Mod. Phys. 82, 3045 (2010).
[7] X.-L. Qi and S.-C. Zhang, Rev. Mod. Phys. 83, 1057 (2011).
[8] Y. Ando, J. Phys. Soc. Jpn. 82, 102001 (2013).
[9] L. Fu, Phys. Rev. Lett. 106, 106802 (2011); T. H. Hsieh, et al., Nat. Commun. 3, 982 (2012).
[10] Y. Tanaka, et al., Nat. Phys. 8, 800 (2012); S.-Y. Xu, et al., Nat. Commun. 3, 1192 (2012); P. Dziawa, et al., Nat. Mater. 11, 1023 (2012).
[11] C.-K. Chiu, et al., Phys. Rev. B 88, 075142 (2013); T. Morimoto and A. Furusaki, Phys. Rev. B 88, 125129 (2013); K. Shiozaki and M. Sato, Phys. Rev. B 90, 165114 (2014).
[12] Y. Ando and L. Fu, arXiv:1501.00531, to be published in Annual Review of Condensed Matter Physics 6.


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2013 Tanaka Lab.