物性基礎工学研究グループ (田仲研)
 

トポロジカル構造の分類


トポロジカル構造とは、連続変形でほどけない空間的な「場」の構造を指します。一般にトポロジカル不変量と呼ばれる整数で分類され、不変量の違う構造は連続的に移り変わることができません。 このように説明すると、数学的でとっつきにくい話に思いがちですが、図を書いて考えると実は非常に明快な概念です。

例として2次元空間における古典XYスピンを考えてみましょう。秩序変数、すなわち「場」は、磁化の方向を表すxy面内を向いた単位ベクトルで、そのベクトルの動き得る自由度(「秩序変数空間」と呼びます)は単位円で表現できます。 ここで、図(a)-(c)にあるような磁化の空間構造を考えます。どれも中心では磁化の方向が決まらない欠陥です。 これらをトポロジカルに分類するために、欠陥を囲うように黄色い矢印に沿って磁化方位の変化を調べます。 各図の横に秩序変数空間で磁化方位がどう変化するかを示しており、(a) (b)では反時計回りに単位円を一周するのに対し、(c)では時計回りに一周します。 (a)と(b)は回る向きが同じなので、これらの構造は連続変形で移り変わることができ、実際に(a)の磁化構造を各点で画面に垂直な軸の周りに90度回転させると(b)になります。 一方、(c)は(a)(b)と周る向きが逆向であるため、(a)(b)とは連続的に移り変わることができません。つまり、(a)(b)はトポロジカルに等価な構造、(c)はトポロジカルに異なる構造、となります。 この例の場合、実空間で欠陥を一周する間に、秩序変数空間を何周するかという「巻付き数」で構造を分類することができ、(a)(b)は巻付き数1、(c)は巻付き数−1となります。 この巻付き数がトポロジカル不変量です。XYスピン以外にも、秩序変数空間が単位円で記述できる系(s波超伝導、超流動ヘリウム、液晶など)であれば、全く同じ議論で欠陥を分類することができ、トポロジカルな分類は系に依らない普遍的な概念となっています。




次に、上記の話を拡張して、3次元空間における3次元単位ベクトル(ハイゼンベルグスピン)のトポロジカル構造を考えてみましょう。 この場合の秩序変数空間は3次元単位ベクトルの方向を示す単位球です。 3次元空間に点欠陥があると、点欠陥を覆う球面を一回りする間に場の空間である単位球を何回覆うかという数で構造が分類されます。 具体例としては図(d)のようなものがあり、モノポールと呼ばれます。

モノポールを囲んでいる球面を2次元平面に展開すると、スカーミオンと呼ばれる面白い構造が得られます。 具体的には、図(e)に示すような射影を考えます。つまり、単位球の北極と球面上の点(赤丸)を直線で結び、南極に接した平面とこの直線の交わる点(青点)に赤丸の点での磁化を置きます。 (複素関数に詳しい人は、複素平面とリーマン球の関係を思い出してください。)このようにしてできるのが図(f)の構造です。 これは、欠陥を伴わない2次元のトポロジカル構造となっていて、境界で磁化が上を向いているという境界条件を課すことによって安定に存在します。 (a)(b)がトポロジカルに等価だったのと同様に、(f)(g)もトポロジカルに等価で、どちらもスカーミオン、またはスキルミオンと呼ばれ、現在物性分野で盛んに研究されています。






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2013 Tanaka Lab.